プロジェクト支援やCIO代行を行う弊社は、大型~小規模のプロジェクトを成功へと導くサポートをしている会社です。その立役者が、弊社に在籍するパートナーたち。弊社で活躍するみなさんに、PMOになったきっかけやoffice Rootを選ばれた理由などを伺いました。
ハードウェア開発エンジニアからPMOへ転身!妹尾和威さん
妹尾和威さん(プロフィール) 弊社の協業パートナーへの登録と同時に、会社員からフリーランスへ転身。 会社員時代から培った経験をもとに、グローバルな案件を円滑に回す調整役として活動している。
PMOになった経緯
甲州潤(以下:甲州):さっそくなんですが、PMOになるまでの経歴を伺ってもよろしいでしょうか?
妹尾:はじめは大手企業の電力関係のプラントや機器を作るメーカで、12年ほどエンジニアをしていました。原子力工学を専攻してきたので、学びを活かせる仕事を……と入社しました。研究所に所属し、やればやるだけ成果をアピールできる楽しい日々でした。
甲州:そうだったんですね。その後、転職されましたが、どんなお仕事だったのですか?
妹尾:転職先も前職に類似した業界でしたが、前職よりも規模の大きなエネルギー開発の国内プロジェクトに参画する機会を得たのです。経験を重ねるうちに関わるプロジェクトの規模はさらに大きくなり、それが自分のターニングポイントとなりましたね。
甲州:そのプロジェクトの延長で海外へ再度転職されて、PMOの仕事にも関わるようになったのでしたよね?
妹尾:そうなんです。転職先の国際機関にはPMOの組織が別にありまして。私は最初エンジニアとしてプロジェクトに関わっていましたので、「仕切ってくれる部署があるんだな」程度で横目に見ていたのです。 プロジェクトは最終的に、850人程のとても大きなものになりました。それとともに、私はエンジニアだけでなく、品質管理や調達、プロジェクトマネジメント的な業務を担当することになりまして。本格的に担当するのはもう少し後になるのですが、PMOの原点はこのときですね。
甲州:そうなんですね。妹尾さんは工学エンジニアの技術や知識を強みとしてお持ちですし、専門的な部分を極めたいという思いもあったと思います。PMOのポジションをアサインされた時は、どんな気持ちでしたか?
妹尾:そのとき私は49歳で、正直、新しいポジションを始める年齢としては遅いかなと思いました。ですが、実際に動いてみたら純粋に楽しかったのです。エンジニアリング、システム開発などのプロジェクトを進める際、選択と決断が繰り返されます。取り返しがつかないこともあるため、エンジニアは慎重になります。 だから迷ったときに「こっちで行く方がいいんじゃない?」と方向を示唆できるPMOの役目に、とても意義があると思いました。また、技術を進める「場」を作り、整えることもPMOだからこそできる仕事だと感じましたね。
甲州:たしかに、おっしゃるとおりだと思います。その後妹尾さんは、会社組織を抜けて現在はフリーランスでいらっしゃいます。この選択をした理由は何だったのでしょうか?
妹尾:フリーランスになった理由はとにかく「自分の仕事に集中したかったから」という一言に尽きます。 組織の中にいると「自分のやるべき仕事」に集中するのが難しいこともありますよね。他の業務に時間がとられることが多々ありますし……。でも、フリーランスは自分のやるべき仕事に自分の裁量で取り組むことができる。責任も伴いますが、私にとってはそれもマッチしていました。
甲州:その思いにすべてが詰まっている気がしますね。そうは言ってもフリーランスになるのは、不安もあったのではないでしょうか?
妹尾:私の場合は逆でしたね。組織にいたときは「本当に私を必要としてくれるかどうか?」という効力感をいつも気にしていました。フリーランスの場合は、組織から少し距離を置いて、客観的な立場、良い意味でドライな立場で物事に取り組むことができます。そういう意味で、不安に思う部分は逆に少なくなりましたね。
きっかけはドストライクな案件に関われたこと 〜パートナーにoffice Rootを選んだ理由〜
甲州:フリーランスになられたタイミングで弊社の協業パートナーに登録いただきました。弊社を選んだ決め手はズバリ何でしたか?
妹尾:フリーランスになった自分に、最初に興味を持ってくださったことですかね。そしてご紹介いただいたのが、自分のやりたいことにドストライクな案件だったことも大きかったです。
甲州:グローバルな課題を持つプロジェクトですね。妹尾さんにお願いして、とても良かったなと思っています。
妹尾:ありがとうございます。最近ではさらに新しいジャンルのプロジェクトにも関わらせていただき、仕事の幅がグンと広がってありがたいです。
甲州:ところで妹尾さん、先ほど年齢の話をされていましたよね。率直なご意見をお伺いしたいのですが、弊社の案件を始めるにあたって年齢は気になりましたか?
妹尾:そうですね。結論から言えば、年齢は関係ないと思っています。私は内向的でどちらかというと人付き合いが苦手なタイプでして(笑)、はっきり言ってしまえば仕事で興味があるのは、自分や周りの年齢よりも働く「環境」なんです。もちろん人が環境を作るのですが、そこではなくで、もっとこうドライな「場」。「型」とか「スタイル」みたいな感じですね。 ちなみに今関わっている仕事では私が最年長者、ペアを組んでいるPMOは20代の方ですが、特に問題なく仕事をしています。プロジェクトに入ってしまえば、自分も含めてメンバーは「同じ目標に向かって進む仲間」に変わりありません。
甲州:妹尾さんらしい回答だなと(笑)。年齢は気にならないとのことですが、逆にどんな点に気を付けていらっしゃいますか?
妹尾:逆にいつも考えているのは、「今の進め方で、円滑にプロジェクトを成功できるかどうか」です。ひとつとして同じプロジェクトはありません。メンバーもプロジェクト内容も一期一会。だからこそ、そのときそのときを全力で取り組むことを旨としています。もちろん、当たり前のことなのですが……。
甲州:いえ、どんなベテランになってもその心構えがあるのは素晴らしいことだと感じます。
現役PMOだからこその、説得力あるアドバイスがありがたい
甲州:グローバルな仕事をはじめ経験が豊富な妹尾さんは、さまざまなところから引き手数多ではないかと思います。弊社の協業パートナーとして仕事をされているメリット・デメリットがあれば教えてほしいです。
妹尾:一番のメリットは、条件面を含めて自分で交渉する必要がないことです。性分的に交渉することが苦手なので、交渉を任せられるのはとても助かります。さらには、私の特性に合った案件を見繕って提案してくださることもメリットだと思っています。 また、実際にPMOとしてご活躍されている甲州さんから、ご自身の経験から得た知識、アドバイスなどをいただけるのもうれしいですね。一言でも、とてもありがたいんです。お世辞は抜きにして、正直デメリットは全く感じていませんね。
甲州:ありがとうございます。良いことばかり言ってくださり、浮かれないようにします(笑)。「一言でもありがたい」と言ってくださいましたが、もっとぐいぐいアドバイスをした方が良いですか?
妹尾:私自身は、本を買ってもその中から1つ、良いと思える一行や1枚のダイアグラムを探すタイプなので、今甲州さんが接してくださる距離感が私的にはバッチリです。 それに、何でもかんでもサポートを待っているだけではいけないし、つねに勉強は続けていかないといけないと思っています。
「役に立っている」実感が一番のやりがい
甲州:これまでPMOとしてご活躍されてきた妹尾さんが思われる、PMOのやりがいとは何ですか?
妹尾:一言にすると「効力感」でしょうか。プロジェクトの役に立っている、という実感が一番のやりがいだと思います。PMOは表立って出ていく存在ではなく、責任を取る立場でもないのですが、きちんプロジェクトにコミットすればクライアントに満足いただけます。それが、いつも目指すところですね。
甲州:なるほど。とはいえこの仕事は、明確にやりがいを感じる場面はなかなか少ないと思います。妹尾さんが「役に立っている」と具体的に思う場面はどんなところですか?
妹尾:例えば、私はプロジェクトを円滑に進めるための図表やテンプレートなど、自分がプロジェクトを出た後も活用してもらえる有効なものを置いていく、ということをよくするのです。それが後になって、風の噂で「便利に使っているよ」などと耳にすると「ああ、役に立っているんだな」と実感しますし、幸せですね。 リアクションが苦手なので、面と向かって感謝をいただくより、そういった形で知る方がうれしいです(笑)。今取り組んでいる仕事が、未来に繋がっていくのかもしれないと思えると非常にやりがいを感じます。 さらに言えば、PMOが加わることでプロジェクトが成功する確率を高められるならば、この先もPMOという仕事はなくならないと思っています。
甲州:私も同じ意見ですが、妹尾さんは、なぜPMOの仕事はなくならないと思うのですか?
妹尾:今の時代、多くのプロジェクトで、物事の複雑性や多様性が高まっています。一方で、客観性、あるいは透明性も求められています。
例えば、プロジェクトで問題が起きたとき、自社だけでなく、サプライチェーンを形成する複数のステークホルダーに影響が起こります。
私は、インテグレーションという概念にとても関心があります。
最近、複雑なプロジェクトをインテグレートし、成功させる条件として、関係者間で「同じ理念・作戦の共有」「(各役割を果たすために)必要な情報が常に見える環境」「共通の言語・ルール」が必要であると学びました。しかし、これらを組織内の当事者だけでやろうとすると、どうしても混沌としがちです。
甲州:確かにそうですね。
妹尾:それを整えられるのが、PMOなんですよね。しかも、当事者たちは普段顔を合わせている「内部」人間ですから、言いたいこともいえないんですよ。だけど、外部から組織内部とは別の目線をもったPMOがポンと加わることで、多様性があり混沌としている組織が整うんです。私は何度もその現場に立ち会ってきました。
甲州:たしかに、PMOって「かゆいところに手が届く」人材ですよね(笑)。
妹尾:私はPMOを誰かに説明するとき、よく「従兄弟のお兄さん」に例えるんですよ。親兄弟でもなくでもない。かといって他人でもない、そんな存在ですね。親が我が子に勉強を教えようとしたら修羅場になるのに、従兄弟のお兄さんならば場が整うみたいな。
甲州:「従兄弟のお兄さん」、素晴らしい例えですね!人と人が働いている以上、私たちが担うPMOという仕事は、AIなどに取って代わることができない分野だと私も思っています。
高まる需要にあわせて、PMOにチャレンジする人が増えてほしい
甲州:何だか妹尾さんらしいですね!最後になりますが、これからPMOとして働くことを検討されている方に向けて、メッセージをいただけますか?
妹尾:プロジェクトマネジメントは、海外ではすでに浸透しています。
そもそも外国人は多国籍メンバーによるプロジェクトが当たり前で、プロジェクトマネジメント自体の研究も進んでいて、参考にできる情報もたくさんあります。
ですが、日本ではPMOの需要が増えつつあるにも関わらず、あまり海外の例が紹介されていない、あるいは引用されていないのが現状です。
きっと外国人は複雑で多様な人やモノのインテグレーションを、長い間模索し続けてきたからだと思っています。
どんなことでも、まず「型」を身に付ければスタートラインに立つことができ、最小限のことは振舞えるようになりますよね。
それで経験を積んで、ベストプラクティスをしっかり定着させれば若い人でもできるはずなのです。
まして、私たちバブル世代に比べ、今の人たちの方が場を整えるために必要な、穏やかさや客観性を備えているように感じています。
ここは全部主観ですが。私は海外のプロジェクトマネジメントの情報も参考にしながら、日本においてもPMOがもっと浸透し、複雑な問題にシステマティックに取り組む事例が増えていったらと思います。
PMOは、例えばPMBOKに準拠し、ベストプラクティスに基づいた各種テンプレート等をもって、プロジェクトを成功確率が高い方向へと導きます。
だからこそ、多様な人やモノのインテグレーションが求められるこれからの時代、PMOの需要はなくならないどころか、さらに増えていくのではないかと思っています。
甲州:いいですね!さまざまな情報をキャッチしながら進めることが大事ですね。今回は貴重なお話しをありがとうございました。